防災・減災ガイド

帰宅困難者にならないために知っておきたい9つの対策

地震や台風だ災害によって公共の交通機関がストップ、多くの通勤や観光客が駅などで溢れかえり、総務省の調査では首都圏の直下型の地震の場合約500万人の帰宅困難者が発生すると言われています。帰宅困難者になると家まで歩いて帰らなければならないだけでなく、飲料や食料が得られない状態が続き、トイレにも行けず、さらに季節によっては猛暑や寒波といった環境も加味した行動が必要となります。

自宅から遠い人ほど事前の計画が非常に重要

平成20年 内閣府でM7.3の首都直下地震が発生した場合のシミュレーション資料を確認すると、 駅や火災が発生したエリア、トイレを求める列など一部の地域で満員電車並みの人口密度に達し、歩行時の移動速度は最悪の場合1/10になる(1時間で400mしか動けない状態)と報告されています

普段は歩いて帰ることができていても、災害が起きた時、情報収集結果、天候、時刻、気温、通行可能な道路、道路の幅、人口密度、火災の発生、倒壊家屋の有無など様々な要因で文字通り帰宅が困難になります。 例えば真夏の猛暑でトイレもなく満員電車のような状態で時間も歩き続けるような状態が続けば元気な方でも無事でいられるか分かりません。

このため、帰宅することになったとしても、むやみに移動を開始することはせず、安否確認・情報収集・体調の確認・帰宅ルートの設定など十分に準備が必要です。特に帰宅ルートは普段の道が使えるとは限らないので、公園や帰宅困難者を支援している施設(一時滞在施設など)への立ち寄りを加味した迂回ルートを設定しておきましょう。

なお、帰宅困難者の問題は東京や大阪といった大都市部だけでなく、東日本大震災では仙台駅で11,000人の市民が駅周辺に詰めかけ混乱が生じて避難所の運営などに大きな影響を与え、道路は大渋滞となってしまったため緊急車両の通行もできず救命活動の妨げてしまう結果となっています(平成27年 仙台市の調査レポートより)。

帰宅困難者にならないための9つの対策

(1) 自治体が発行するハザードマップや帰宅困難者向け地図を入手しておく
(2) ハザードマップと照らし合わせて普段の帰宅ルートのリスクを知る
(3) 通学や勤務先の周辺で帰宅困難者の支援に取り組んでいる施設を把握しておく
(4) 持ち運びに優れた防災グッズや、長距離歩くアイテムの準備
(5) 天候や季節に応じた準備を常に整え、徒歩帰宅シミュレーションを実践
(6) 勤務先で災害時にどんな対策がなされているか把握しておく
(7) スマートフォンに情報収集がしやすい環境を整えておく
(8) スマートフォンが使えなくなってもすぐにラジオをつけられる余裕を持つ
(9) 自宅までの地図を何枚かコピーしておく

ハザードマップ・帰宅困難者向け地図の入手

多くの場合、最寄りの市役所の危機管理室などで市民向けに無料配布しています。ハザードマップは被害予測が書き込まれた地図になっており、地域特有の被害を想定することができます。例えは冠水しやすい場所であったり、土砂崩れが発生しやすい場所など細かく記載されています。帰宅困難者向けの地図は支援してくれる施設名や場所が地図に書き込まれている事が多く、行政からは正確な被災情報提供、飲料水やトイレの提供などを見込むことができます。ハザードマップ・帰宅困難者向け地図と 帰宅ルートを重ね合わせて見れば普段の帰宅ルートがどれぐらい危険か?また、どんな迂回ルートを設定できそうか各段に計画しやすくなります。ちなみにですが、勤め先までの距離に応じて勤務先・自宅との中間点とそれぞれの地域の市役所に寄って地図を確保してください。1つのマップで皆さんの帰宅ルートの全行程が含まれているとは限りません

天候や季節に応じた準備を常に整え、徒歩帰宅シミュレーションを実践

あなたは普段何km歩いていますか?オフィスに歩きやすいスニーカーなどの用意はありますか?帰宅困難者の調査・研究では徒歩10kmまでが限界、それ以後1km帰宅距離が伸びていくにつれて10%ずつ徒歩帰宅を途中で断念してしまう方が増加し、20kmでは全員脱落が一つの目安とされています。アウトドアの趣味があって体力に自信がある方ならまだしも自信のない方は果たして10km歩けるかどうか実践しておきましょう。

勤務先で災害時にどんな対策がなされているか把握しておく

山ほどある企業の防災意識はバラバラ、法律で義務付けられていることもないため、勤め先の企業が「災害に対してノープランだった」という場合も十分にあります。もし企業側が災害に対して様々な準備が進んでいれば、自身の帰宅計画にも余裕を持たせることができるでしょう。事務所が入居しているテナントビルや、近くの大型商業施設側の方針なども聞いておけると帰宅困難者への対策がさらにはかどります。

スマートフォンが使えなくなってもすぐにラジオをつけられる余裕を持つ

帰宅困難者になってしまうと帰宅まで長時間かかる場合があり、バッテリーが尽きれば高性能な情報収集ツールなスマートフォンも意味をなさなくなります。内閣府による東日本大震災 関東地区での約5,000名に対する帰宅困難者の調査では帰宅中に必要と感じたものは、携帯可能なテレビ・ラジオ等、そして携帯電話のバッテリーまたは充電池という情報源の確保が最も多い結果になりました。災害時はどんどん新しい情報が入ってくるため、正確な被害状況や支援してくれる場所の把握に努めましょう。バッテリーが尽きても引き続き情報が得られるよう、ラジオを聴く習慣が特になくてもポケットラジオをオフィスに置いておくか、バッグに忍ばせておくと良いでしょう。

自宅までの地図を何枚かコピーしておく

自宅までの距離があったり道のりが複雑な場合ほど、災害規模が大きいほど、帰宅ルートも複雑になりがちです。このような条件に当てはまる方は自宅までの地図を何枚かコピーしておくと、被害状況の情報が入った時に細かく書き込んでいくことでどのルートが現在使えないか把握しやすくなります。停電や設備損傷によりオフィス内のパソコンやプリンター、インターネット接続が使えなくなる場合があるのであらかじめ印刷しておくと帰宅への計画を立てやすくなります。A3用紙は1円玉10枚にも満たない重さですし、備えておいて損はありません。

帰宅を決断する前に情報収集を

自治体としては帰宅困難者の大量発生を抑制するため企業に対しては一斉帰宅を控えるように呼びかけています。しかし、実際には東日本大震災の関東地区では8割以上の方が勤務先や学校から離れ自宅へと向かっていました。会社から離れ自宅へと向かった理由は、管理者自身が帰宅を促したり、従業員が帰宅できると自己判断。その結果、帰宅に10時間以上かかり日付も変わってしまった方が全体の約3割にも達していました。正確な情報収集を得ていくことで、自身の二次被害に遭う確率を抑えつつ、もっと大きな被害に遭われている被災地への迅速な救援活動へと繋がります。