防災・減災ガイド

水道水の汲みおいた水を安全に保存できる期間はどれくらいか?長期間保存するコツとは?

防災訓練での給水車による飲料水の配布状況。一般家庭の水道水はどうすれば上手く保存できるか?

常温でも10日前後、水道水レベルのクオリティをキープできる

結論から書きますと、密栓したペットボトルなどでの常温保存の場合は10日前後
その後、水道水を殺菌している残留塩素濃度はゼロになってしまうものの、常温で6ヶ月経過しても一般細菌が増殖は見られなかったとのこと。

蛇口から出した後の保存水を10日間前後のローテーションで汲み直しておけば、事故による断水や災害時でも水道水レベルの安全性の飲料水を確保できます。この実験は静岡県磐田市が実施し、下記のページでその詳細がPDFで公開されています。

静岡県磐田市環境水道部 水道課(福田支所2階)浄水グループ
平成27年度「水道水の保存」検証実験

どんな時も10日保つとは限らない点に注意

アルミ缶タイプの災害用備蓄水。写真の保存水で大阪広域水道企業団が製造したもので現在は販売を終了している。磐田市の実験期間は6月からはじめて夏場を超えてさらに11月まで継続されたものですが、実験の結果報でも、「容器から採水する際に、汚染されないよう細心の注意を払って行った」とあります。

例えば容器に汚れていたり、水を容器へ入れる際にゴミや汚れた手に触れた場合では、水道水を殺菌している塩素が早期に分解してしまって実験結果のような品質を保つことができなくなります。

私達が蛇口からひねって出てくる水道水は水道法により残留塩素濃度が一定値あることが義務づけられていますが、この塩素は雑菌を含めた他の物質を酸化させることで効果が発揮できています。

しかし、塩素は雑菌やウイルスだけを酸化して不活性化させている訳ではないので、汚れた手で注ぎ口やフタへ触れたり、汚れが残ったままの容器に水道水を入れてしまうと、その汚れに塩素の酸化能力を使ってしまって殺菌作用が急速に消失していきます。

また、塩素は不安定でとても分解しやすい性質も持ちますので、熱や光によって分解を促進させないためにも常温保存の場合は涼しく、直射日光の当たらないような場所が適しています。

お住まいの物件によっても水道事情が違ってくる

給水車の後部に設置された蛇口。例えば戸建物件に住んでいる方は、地中に張り巡らされている水道管に繋げて水道水を得ています。一方で、マンションのような集合住宅では屋上などに設置された貯水槽へいったん水をため込んでから各ご家庭へ供給しています。

特にお住まいの集合住宅で
・建物の老朽化が進んでいる
・地下式の受水槽を採用している
・マンション設備のメンテナンスに管理会社が入っていない

といったケースは貯水槽自体の管理体制に問題が発生しやすく、蛇口から出す時点で既に殺菌効果が薄れ、同じような条件で水道水を保存したとしても磐田市の実験した10日間よりも短い期間で消失してしまう場合があります。

東京都福祉保健局
残留塩素濃度の管理に注意を!(PDFファイル)

水道水は衛生確保のため塩素消毒をしていますが、夏は気温が高く、水が貯水槽にたまっている間に消毒用の残留塩素が特に消失しやすくなります。残留塩素がなくなると水の中で微生物が繁殖し、水質悪化の原因となることがあります。

浄水器を通して採水すると残留塩素を除去してしまう

特に高価な機種でなくても水道水を浄水器に通すことで水道水を殺菌している塩素が抜けてしまうケースがあります。蛇口から出した水を、すぐに使う場合は「カルキ臭がしなくなって水がおいしい・・・」などといった浄水器ならではのメリットがあります。

ですが、飲料水を普段よりも長期間・雑菌の増殖を抑えて安全に保存したい場合では浄水器を通さないようにしたほうが良いでしょう。例え容器をキレイに洗浄していたとしても、食中毒などを防ぐために充分配慮された食品工場のような環境は困難ですから、容器に付着している微量な汚れや雑菌・ウイルスへは水道水の残留塩素を頼るほうが現実的です。